
企業のマーケティング活動は、今や「勘や経験」ではなく「データ」に基づいた意思決定が求められています。その中核をなすのが「データドリブンマーケティング」。
本記事では、データドリブンマーケティングの基本概念から、実際に活用するためのステップや具体的な施策例、導入時に直面しがちな課題とその乗り越え方までを、実務視点でわかりやすく解説しています。
これからデータを活かしたマーケティングに取り組みたい方や、すでに実践中で課題を感じている方にも役立つ内容です。
1. データドリブンマーケティングの定義と目的
データドリブンマーケティングとは、顧客行動や属性データを活用し、仮説や経験に頼るのではなく「事実」に基づいてマーケティング施策を展開するアプローチです。
海外では「顧客情報を活用したブランドコミュニケーションの最適化」ともされ、日本国内では「KKD(勘・経験・度胸)に依存しない意思決定」として注目されています。
この考え方により、企業は無駄なコストを削減し、精度の高い施策を実施可能になります。一方、顧客にとっては自分に合った体験を受けられることで、満足度やロイヤルティが向上します。
2. 国内企業の導入事例:業種・目的の異なる3つのケース
2-1. アパレル業界:オンラインとオフラインの顧客体験を統合
あるアパレルブランドでは、実店舗とECサイトの会員データを統合。SNSで紹介したコーディネートが来店行動に与える影響を分析し、オフラインとオンラインの施策を連動させました。結果、購入単価と満足度が大幅に向上しました。
2-2. 通信サービス業界:カスタマージャーニーの最適化とCV改善
大手通信企業では、Web・メール・コールセンターの行動履歴をCDPで一元化。離脱タイミングを特定し、FAQやチャットボットを強化したことで、資料請求率1.5倍・CVR1.3倍を実現しました。
2-3. 化粧品EC企業:LTV向上を目指した継続購入施策
D2C型の化粧品ブランドでは、BIツールで購入傾向を分析し、MAツールでのパーソナライズメール施策を実施。2回目購入率が20%以上改善し、LTV向上に貢献しました。
SCデジタルでも、いくつか事例記事を公開しています。
グラニフがBraze×Amplitudeで実現したマーケティング施策とは
3. データドリブンマーケティング実践の5ステップ
データを活用して成果につなげるには、次のような段階的なプロセスが重要です。
3-1. ステップ1:目的の明確化とKPI設計
新規顧客獲得、LTV向上、離脱防止など、目的に応じたKPIを明確に設定します。
3-2. ステップ2:データの収集と統合
CDPを活用してWeb・店舗・CRMなどのデータを集約し、分析可能な状態に整えます。
3-3. ステップ3:ユーザー分析とインサイト抽出
BIツールでセグメント別の行動傾向を可視化し、ペルソナ設計や施策の設計に活かします。
3-4. ステップ4:パーソナライズ施策の実行
MAツールを使い、One to Oneで最適なタイミングとチャネルの施策を実行します。
3-5. ステップ5:効果検証と改善のPDCA
施策の成果を定量評価し、改善案を回していくことで精度を高めます。

最初からすべて完璧にやろうとする必要はありません。できる部分から段階的に進めることで、データドリブン体制は着実に構築できます。
4. 実践に欠かせない3つのツール
データドリブンマーケティングを成功に導くためには、適切なツールの導入と活用が不可欠です。特に以下の3つは、施策の実行や分析精度に直結する重要な基盤となります。
4-1. CDP(Customer Data Platform)
CDPは、分散して存在する顧客データ(Webアクセス、購買履歴、コールセンター対応記録、SNSでの反応など)を一元的に収集・統合するためのプラットフォームです。これにより、チャネルごとに異なる顧客像を「一人の顧客」として統合的に把握でき、パーソナライズ施策の質を大きく向上させることが可能になります。たとえば、オフラインでの来店履歴とオンラインでの閲覧傾向を掛け合わせたセグメントを作成し、より的確なプロモーションを展開できます。
4-2. BI(Business Intelligence)ツール
BIツールは、膨大なデータを可視化し、現場や経営層が迅速かつ的確な意思決定を行うための手助けをしてくれます。売上、キャンペーン成果、チャネル別パフォーマンス、ユーザー行動のトレンドなどをグラフやダッシュボードで表示し、誰でも直感的に理解できる形に変換します。特に、PDCAサイクルを短期間で回す上で不可欠なツールです。
4-3. MA(Marketing Automation)ツール
MAツールは、顧客の属性や行動履歴に応じて最適な施策を自動的に配信・実行できるソリューションです。メール配信、Web接客、プッシュ通知、スコアリングなどが代表的な機能で、タイミングと内容の最適化によるCVRの向上が期待されます。また、一度仕組みを整えることで、運用負荷を抑えつつ継続的な施策展開が可能になります。
5. よくある失敗とその対策
データドリブンマーケティングの導入にあたっては、さまざまな壁に直面することがあります。以下は、多くの企業で共通して見られる課題とその対策です。
5-1. 分析だけで満足し、施策に落とし込めない
データを収集・可視化するところまでは進んでも、そこから具体的な施策につながらず、“データを見ること”が目的化してしまうケースは少なくありません。
→ 対策としては、「分析→アクション」の連携を意識し、可視化したインサイトをもとにアクション設計まで落とし込むプロセスをチーム内で明確化することが重要です。KPIと紐づけた形で施策を立案し、必ず“打ち手”につなげる運用ルールを定めましょう。
5-2. 人材・体制不足によりツールが活用されない
ツールを導入しても、運用ノウハウや体制が整っておらず、使いこなせていないという状況もよく見られます。特に中小規模の企業では、兼務担当者に過度な負担がかかることも。
→ 対策としては、段階的なツール導入とともに、社内教育や外部支援の活用を検討すべきです。SaaSベンダーによる導入支援プログラムや、運用代行サービスを一時的に利用することで、運用初期のハードルを下げることができます。
5-3. 部門間でデータが統合されていない
マーケティング、営業、カスタマーサポートなど、部門ごとにデータが分断されていると、全体最適な戦略を描くことができません。
→ 対策としては、CDPやデータ連携基盤の導入により部門横断でのデータ統合を推進するとともに、「データは全社資産」という認識を共有する文化づくりが欠かせません。経営層の理解と巻き込みも、スムーズな体制構築には必須です。
6. まとめ
データドリブンマーケティングは、「分析すること」ではなく「成果に結びつける仕組みづくり」です。段階を踏んだ設計と、目的に沿った運用体制が成功のカギとなります。
また、データを取り巻く環境は年々変化しています。たとえば、クッキーレス時代の到来や、AIやOMO施策の進化、ゼロパーティデータの重要性の高まりなど、今後注目すべき変化が次々と訪れることが予測されます。これらに柔軟に対応していくためにも、今のうちから基盤となるデータ活用体制を整えておくことが重要です。
変化する市場において、データを活かせる企業こそが選ばれる時代。今こそ、自社のデータ活用を本格的に見直してみませんか?
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