3rd Party Cookieの壮絶な規制劇!プライバシー保護とマーケティングの攻防

近年、プライバシー保護に対する意識が高まり、ウェブ上での個人情報の収集と利用をめぐる問題が注目されています。その中でも、ウェブサイト間でユーザーの行動をトラッキングするために使用される「3rd Party Cookie」が大きな議論の的となっています。
本記事では、3rd Party Cookieとは何か、そしてそれを規制しようとする動きとその背景、さらには各ブラウザがどのような対応を行っているのかについて詳しく解説します。

プライバシー保護の重要性が高まる中、マーケティング活動にも大きな影響を与えるこの問題について、ぜひ理解を深めていただければと思います。

1.3rd Party Cookieとは

3rd Party Cookieの定義と概要

3rd Party Cookie(サードパーティクッキー)は、ユーザーが訪問したウェブサイトのドメインとは異なるドメインから発行されるCookieです。主に広告会社やアナリティクスツールの提供元などが利用しています。例えば、ウェブサイトのオーナーが契約している広告通信サーバーは、ユーザーが閲覧したページに合わせて広告を表示するために、3rd Party Cookieを使用します。

3rd Party Cookieの属性と機能

以下に3rd Party Cookieの属性と機能を示します。

  1. ユーザートラッキング: 3rd Party Cookieを使用することで、異なるドメイン間でユーザーをトラッキングすることができます。これにより、ユーザーのウェブサイトの訪問履歴や行動を調査することができるようになります。
  2. ターゲティング広告: 3rd Party Cookieを活用することで、広告主はユーザーの興味や嗜好を把握しやすくなります。そのため、よりターゲットに合った広告を表示することができます。

3rd Party Cookieとプライバシー保護の問題

しかし、3rd Party Cookieはプライバシー保護の観点から問題が指摘されています。以下にその問題点を示します。

  1. トラッキングの透明性: ユーザーは自身のデータがどのように収集・利用されているかを把握することが困難です。
  2. 行動プロファイルの作成: 3rd Party Cookieを利用することで、広告主はユーザーの訪問履歴や興味関心などを把握できます。そのため、詳細なユーザーの行動プロファイルが作成される可能性があります。
  3. 個人情報の漏洩リスク: 3rd Party Cookieにはユーザーの個人情報が含まれることがあり、不正なアクセスにさらされるリスクがあります。

以上が、3rd Party Cookieの基本的な概要とプライバシー保護の問題点です。次のセクションでは、これらの問題に対応するためにCookieの規制が行われている背景について説明します。

2. Cookieを規制する背景

Cookieの規制が強化される背景には、いくつかの要素があります。以下にその要素を詳しく解説します。

2.1 プライバシー保護意識の高まり

近年、ユーザーのプライバシー保護意識が高まってきています。特に、Cookieデータからユーザーを特定したり、行動をトラッキングすることが可能であることが広く知られるようになりました。ユーザーは自分の情報が勝手に収集・利用されることに対して懸念を抱くようになりました。このような懸念から、Webサイトでの閲覧履歴や行動履歴の収集・活用がプライバシーの侵害と見なされるようになり、Cookieの規制が必要とされるようになりました。

以下は、プライバシー保護意識の高まりがCookie規制の背景となる主な要素です。

  1. ユーザーからの懸念: ユーザーは自分の情報が勝手に収集・利用されることに対して懸念を抱いています。特に、自分の行動や嗜好がトラッキングされることに不快感を抱くケースが多く見られます。
  2. プライバシー侵害への警戒: Cookieデータからユーザーを特定したり、行動をトラッキングすることができることが一般的に知られるようになりました。このため、Webサイトでの閲覧履歴や行動履歴の収集・活用がプライバシーの侵害と見なされるようになりました。

2.2 大手プラットフォーマーの優位的地位濫用への懸念

大手プラットフォーマー(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoftなど)やLINE、Yahoo!などの大手企業は、自社の提供するサービスを通じて膨大な個人データを収集することができます。これにより、特定のターゲットに合わせた効果的な広告を行うことが可能となり、市場支配力を強める傾向があります。

以下は、大手プラットフォーマーの優位的地位濫用への懸念がCookie規制の背景となる主な要素です。

  1. 市場支配力の強化: 大手プラットフォーマーは膨大な個人データを収集することにより、自社の広告サービスを効果的に提供し、市場支配力を強化することが可能です。これにより、他の競合企業との公平な競争環境が崩れる恐れがあります。
  2. 不当な情報の取得・利用: 大手プラットフォーマーが収集した個人データが、ユーザーの意に反した形で取得や利用されることが懸念されています。このような不当な情報の取得や利用を防ぐため、個人情報に関する不正行為を規制する法律が制定されています。

以上が、Cookieを規制する背景についての説明でした。次は、各ブラウザごとのCookie規制の状況について詳しく解説します。

3. ブラウザごとのCookie規制の状況

各ブラウザはCookieの規制に対応する機能を提供しています。以下では、主要なブラウザにおけるCookie規制の状況について解説します。

3.1 SafariのサードパーティーCookie規制

Apple社のSafariは、積極的なサードパーティーCookieの規制を行っています。日本国内でのSafariのシェアが高く、約26%を占めているため、その影響力は大きいです。2017年に導入された「ITP(Intelligent Tracking Prevention)」というトラッキング防止機能では、サードパーティーCookieが30日で削除されるなどの規制が行われました。さらに、2022年9月以降はサードパーティーCookieが完全にブロックされる予定であり、ファーストパーティーCookieやLocal Storageも最大7日で削除される予定です。

3.2 ChromeのサードパーティーCookie廃止予定

Google社のChromeは、高いシェア率を持つブラウザであり、Cookie規制に注目されています。しかし、2022年8月現在、具体的なサードパーティーCookieの規制は行われていません。ただし、Google社は以前からサードパーティーCookieの廃止を発表しており、廃止予定は何度も延期されています。2024年4月には2025年初頭から段階的にサードパーティーCookieを廃止すると発表されています。ただし、広告業界に大きな影響を与えるため、代替技術が整備されるまでChromeではサードパーティーCookieの規制は行われないと考えられています。

3.3 Microsoft Edgeのトラッカー規制

Microsoft社のブラウザであるMicrosoft Edgeは、「追跡防止」機能を備えています。この機能により、悪意のあるトラッカーはブロックされるようになっています。ただし、サードパーティーCookieに対しては厳しい規制はありません。Microsoft EdgeはGoogleが開発したブラウザエンジンを使用しているため、ChromeのサードパーティーCookieの規制が実施されれば、その対応も考えられます。

3.4 FirefoxのトラッカーCookieブロック

Mozilla社のFirefoxは、初期設定ではトラッカーのCookieがブロックされ、非トラッカーサイトごとにサードパーティーCookieが隔離されるような設定がされています。ただし、ファーストパーティーCookieはデフォルトではブロックされません。ユーザーは個別に設定をカスタマイズすることもできますが、多くのユーザーは初期設定のまま使用しています。

各ブラウザのCookie規制の状況には差異がありますが、海外ではGDPRやCCPAなどの法的な規制により、Cookieの利用に制限が設けられています。また、日本国内でもCookie規制に対応する動きがあり、ブラウザやプラットフォームも対策を進めています。企業は各ブラウザのCookie規制に対応するための対策を検討する必要があります。

4. Cookie規制によるマーケティングへの影響

マーケティングへのCookie規制は大きな影響を与えます。これまで幅広く利用されてきたCookieが制限されることで、マーケティング活動におけるいくつかの重要な要素が制約される可能性があります。以下に、Cookie規制がマーケティングに及ぼす影響をいくつか紹介します。

4.1 リターゲティング広告の制約

リターゲティング広告は、自社ウェブサイトを訪れたことのあるユーザーに関連する広告を表示する手法です。従来、ユーザーを追跡するためにサードパーティCookieが使用されてきましたが、Cookie規制によりその利用が制限されると、リターゲティング広告の効果が低下する可能性があります。企業は、リターゲティング広告に代わる新たな広告戦略を模索する必要があります。

4.2 コンバージョンの計測の困難さ

コンバージョンは、自社ウェブサイトが設定した目標を達成することを指します。従来、Cookieを使用してユーザーの行動を追跡し、コンバージョンの計測を行ってきましたが、Cookie規制によりその利用が制限されると、正確なマーケティング戦略の立案が難しくなります。

4.3 アトリビューション分析の低下

アトリビューション分析は、コンバージョンに至るまでのユーザーの接触経路や貢献度を計測する手法です。これまでCookieがアトリビューション分析の重要な要素でしたが、Cookie規制によりその利用が制限されると、アトリビューション分析の精度が低下する可能性があります。

4.4 自動入札の精度の低下

自動入札は、広告主が予算や目標に応じて入札価格を自動的に最適化する手法です。自動入札の精度は、コンバージョンデータの量に影響を受けます。Cookie規制によりコンバージョンデータが制限されると、自動入札の精度が低下する可能性があります。

以上が、Cookie規制がマーケティングに及ぼす影響の一部です。マーケティングプロフェッショナルは、これらの影響を踏まえて、適切な対策を講じる必要があります。次のセクションでは、Cookie規制に対する代替手段について詳しく説明します。​​

5. Cookie規制に向けた代替手段

Cookie規制により、マーケターはサードパーティーCookieに頼らず、代替手段を見つける必要があります。以下に、Cookie規制に対応するための代替手段をいくつか紹介します。

5.1 利用者の明示的な同意の取得
Cookie規制に対応するためには、利用者から明確な同意を得ることが重要です。利用者がCookieの利用に同意する手続きを実装し、必要な情報を提供して同意を得るようにしましょう。同意を得るためのユーザーインターフェースやポップアップウィンドウの設計にも注意が必要です。

5.2 プライバシー保護に配慮したデータ収集方法の開発

Cookieの代替手段として、ユーザーのプライバシーを保護しながらデータを収集する方法を模索する必要があります。匿名化や集計化されたデータの利用、ユーザーが個別のトラッキングをオプトアウトできる仕組みの導入などが考えられます。

5.3 コンテキスト情報の活用

Cookieの代替手段として、ユーザーのコンテキスト情報を利用する方法があります。コンテキスト情報とは、ユーザーの行動や状況に基づいてターゲティングを行うことです。ユーザーが閲覧するページの内容や地域情報、デバイスの種類などを活用して、より精度の高いマーケティングを実現することができます。

5.4 パーソナライズド広告の提供

Cookieの代替手段として、パーソナライズド広告の提供も考慮されます。パーソナライズド広告は、ユーザーの嗜好や興味に合わせてターゲティングされる広告です。利用者の同意した情報を元にパーソナライズド広告を配信することで、効果的なマーケティングが可能になります。

5.5 コンテンツの充実

Cookie規制に対応するためには、コンテンツの充実が欠かせません。ユーザーが価値を感じるコンテンツを提供し、定期的なコミュニケーションを行うことで、利用者が自ら情報を提供してくれる可能性が高まります。

5.6 クロスデバイスの活用

Cookie規制によって、クロスデバイスでのトラッキングが困難になりますが、多くのユーザーが複数のデバイスを使用しています。そのため、ユーザーを特定するためのログイン機能やID連携など、クロスデバイスの活用を検討することが重要です。

以上がCookie規制への代替手段のいくつかです。企業は自社の特性や目的に応じて、これらの手法を組み合わせることで適切にCookie規制に対応する必要があります。また、技術の進歩とともに新たな代替手段が現れる可能性があるため、最新のトレンドや情報にも注目していく必要があります。

​​​​​​​​まとめ

Cookie規制は、近年のプライバシー保護意識の高まりや大手プラットフォーマーの優位的地位濫用への懸念から生まれています。各ブラウザはCookieの規制に対応する機能を提供しており、これがマーケティング活動に大きな影響を及ぼしています。しかし、利用者の明示的な同意の取得、プライバシー保護に配慮したデータ収集方法の開発、コンテキスト情報の活用、パーソナライズド広告の提供、コンテンツの充実、クロスデバイスの活用など、さまざまな代替手段が提案されています。

企業はこれらの手法を組み合わせ、適切にCookie規制に対応していく必要があります。技術の進歩に合わせて、新しい対策も登場してくると考えられるため、最新の動向にも注目し続けることが重要です。

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