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効果を出すための顧客マネジメントとは
「CRM(Customer Relationship Management)」と聞いて何を思い浮かべますか?おそらく、以下の2つが思い浮かんだかと思います。
- 顧客との関係を管理し、長期的に関係を深めていくマネジメント手法
- 顧客管理としてのITツール
本稿では、マネジメント手法としてのCRMについてご紹介します。
今では笑い話だが本当にあった話
2000年代初頭「CRMツールを導入したが、使いこなせない。サポートして欲しい」と、ツールが普及するにつれて企業様からご相談を受けることが多くなっていました。
使いこなせない理由をお聞きすると「ツールを導入すれば顧客との関係構築を自動化できると思っていた」「マーケティング部署からの依頼で情報システム部署にてCRMツールを選定・導入したので、運用はマーケティング部署でと言われて」など、今では笑い話のようなことが起こっていたのです。
マネジメント手法としてのCRMを実施したいとの意向は感じたのですが、顧客マネジメント戦略よりもツール導入を優先してしまったことが要因でした。
顧客の興味関心を把握した顧客マネジメント
私が懇意にしている自動車ディーラーの担当者の対応が「マネジメント手法としてのCRM」の参考になるかと思いますので、ご紹介いたします。
そのディーラーではCRMツールが導入されており、車検や定期点検・キャンペーンのお知らせなどの案内が都度配信されていますが、担当者の方は大福帳(手帳)をフル活用しています。
CRMツールが導入されていて車検などの案内が自動で配信されているのに「なぜ大福帳(手帳)」も活用しているのか聞いたところ、「ツールが導入されて、いい意味で興味関心に沿ったコミュニケーションの効率化はできたが、クロージングまで見据えたコミュニケーションが困難であり、顧客のロイヤリティに影響するので活用している。提案の背景や理由の説明、提案に対する納得度合いを把握して進めないと一方的な情報配信になり、顧客を置いてきぼりにする可能性がある」との回答でした。そのために、顧客の性格なども記載しているとのことでした。
担当者の方は、ディーラーからのお知らせの配信前に大福帳(手帳)を活用したパーソナライズされた案内を作成し、案内が到着したタイミングを見計らってフォロー電話をかけ、「車の状況だけではなく、自然な会話の流れで家庭環境の変化・興味関心の変化」などのヒアリングを実施しているとのことでした。
その後、来店したお客さまにはヒアリングを反映した整備提案や興味関心に合わせた情報提供(車以外についての)がありますが、ここまではごく当たり前のことなので、高い費用を支払う動機には至りません。担当者の方は、プラスアルファのサービスを提供することで、私の感情を揺さぶってくるのです。
担当者の先を読む力、ホスピタリティの凄さ
「車検、定期点検の際は、汚れの有無を問わず車内清掃」「些細な車の不具合でもすぐに確認にきてくれる」「子供のイベントや年がわりなどの接目にプレゼント」など、「予想外の対応」「ここまでやるか!」といった「感動体験」で、私のロイヤリティ担当者の方と付き合い始めてから10数年以上高いまま維持されています。余談ですが、最近私の子供が免許を取得し、そのご担当者さまから車を購入したいと話しています。幼少期からのご担当者さまの囲い込みが功を奏していると個人的には思っております。
この担当者の方の顧客マネジメントポイントは、以下の3つにまとめることができます。
- パーソナライズした提案・情報提供
- 感動体験
- 顧客毎にコミュニケーションシナリオを作成
ちなみにですが、以前私は他メーカーの車に乗っておりましたが、今の担当者のようなホスピタリティがなくロイヤリティもなかったため、躊躇なく今のメーカーに乗り換えました。
「顧客のなぜ?」に応えているか
読者の方からは、「このような『顧客マネジメントポイント』は押さえている」との声が出てきそうですが、オンラインコミュニケーションやコミュニケーションの自動化が主流になっているが故に、見逃されがちなポイントがあります。
それは、コンテンツにて「なぜ、私にこの案内が来るのか?」「なぜ、私にこのサービスや商品を紹介するのか?」など、「顧客のなぜ?」に説明、応えることです。
リアルのコミュニケーションでは、顧客から質問があればすぐに回答できますが、オンラインでは回答できないため、顧客はそれ以上の情報を理解しようとはせず、企業が想定する行動に移せるケースは稀です。よってサイレントカスタマー化し、顧客との関係構築は難しくなります。
特に、バースデーカードに割引案内を同送する施策は要注意です。企業側は「お誕生日のタイミングでご自身のご褒美に」と思っているかもしれませんが、顧客からすると「なんで、誕生日に自分で買い物するの?」と捉えられてしまう恐れがあるため、施策効果も限定的かと思います。過去、私のクライアントも同様な施策を実施していましたが、割引分の予算で(有形物の)バースデープレゼントを差し上げることで、顧客のロイヤリティはアップし、顧客からの売上も伸長しました。
簡単なようで、対応が疎かになってしまっている点かと思います。留意してコンテンツ制作をしてみてください。
この記事の執筆者
コンサルティング本部
CXコンサルティング マネージャー
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